ジャッキー・マクリーン『4,5 AND 6』

 しばらくジャズを聴かないで過ごしていた。「聴きたい」という気持ちになれなかった、というだけで、これといった理由もないし、今までもときどき、こんなことはあった。でも、それが三ヶ月弱続いたというのは、これまでになかったことだ。
 そんなときに、ふとCDショップに立ち寄り、廉価版のジャズCDがたくさん出ているのに驚いて、あれこれ手に取っていると、後ろからこんな会話が聞こえてきた。
「ジャズって、真面目に聴くと難しそうだけど、なんとなく聴いてると、気持ちいいよね」
「そうね、日曜の朝なんて、いいわよね。どれか買ってく?」
「いろんな曲が入ってるのがよさそうじゃないか?」
 振り向くと、ぼくと同じくらいの年恰好の夫婦が、輸入盤のボックスセットを選んでいた。
 そうだよな、なんとなく聴いてていいんだよな。もしかしたら、なまじ聴きなれてしまったぶん、ぼくはジャズというものを難しく考えようとしていたのかもしれない。そう思いながら、何も買わずに店を出たのだが、急に聴きたくなったのが、ジャッキー・マクリーンの『4,5 AND 6』。ずいぶん前に i-Pod nano に入れておいたので、すぐに帰り道の友になった。

Jackie McLean "4,5 AND 6"(ユニバーサル・ミュージック 2007)
《収録曲》1 Sentimental Journey / 2 Why Was I Born? / 3 Contour / 4 Confirmation / 5 When I Fall In Love / 6 Abstraction
《パーソネル》ジャッキー・マクリーン(アルトサックス)、マル・ウォルドロン(ピアノ)、ダグ・ワトキンス(ベース)、アート・テイラー(ドラムス)、ドナルド・バード(トランペット。3、4、6曲目に参加)、ハンク・モブレー(テナーサックス。4曲目に参加) 1956年7月13日(1〜3)、7月20日(4〜6)、ニュージャージーにて録音

 最初がヴォーカル曲のスタンダード、「センチメンタル・ジャーニー」。有名な曲をジャッキー・マクリーンが吹くとこうなる、といった感じで楽しい。続いてもう一曲カルテットで、三曲目からはトランペットが入り、四曲目ではテナーサックスも参入。だから"4,5 AND 6"なんだな。五曲目でカルテットに戻り、最後はまたクインテット。変化ぶりが面白くて、たとえば九州ラーメンを食べているとき、ネギ増やして、次は高菜入れて、と味の変化を楽しんでいるような。いや、ラーメンじゃおかしいかな。ブラックで飲んでるコーヒーに、砂糖を入れて、ミルクを足して、おかわりはまたブラックで、といった感じか。
 アルトサックスの高い音がかっこいいのだけれど、リズムセクションもとてもいい。とりわけ、ピアノのマル・ウォルドロン、彼のアルバムも聴いてみたくなった。
 あらためて「ジャズって楽しいな」と思わせてくれた一枚。やはり名盤なのでしょう。