ノエル・クラッドの未訳長篇

 以前に感想を書いた『ニューヨークの野蛮人』と『ダイヤモンドの味』の著者、ノエル・クラッドに興味を持ち、他にどのようなものを書いているのか、探してみた。
『ニューヨークの野蛮人』の解説には、同書を含め、四作が紹介されている。
THE SAVAGE ハードカバー、1958年サイモン&シャスター刊。ペーパーバック、1959年パーマ・ブックス刊。『ニューヨークの野蛮人』宇野輝雄訳 1964年ハヤカワ・ミステリ刊
LOVE AND MONEY ハードカバー、1959年ランダムハウス刊。ペーパーバック、同年バンタム・ブックス刊
UNTIL THE REAL THING COMES ALONG 1961年ランダムハウス刊。ペーパーバック、1964年バンタム・ブックス刊
A TASTE FOR BRILLIANT ハードカバー、1964年ランダムハウス刊。ペーパーバックは未確認(未刊か?)。『ダイヤモンドの味』小倉多加志訳 1965年ハヤカワ・ミステリ刊
 ところが、ネット古書店で探してみたところ、『ニューヨークの野蛮人』の前、1955年に、WHITE BARRIER という本が、エイヴォン・ブックスから出ているらしいことがわかった。
 インターネットのおかげで洋古書は買いやすくなったもので、平均1000円くらいで、この五点が一月あまりのうちに手に入った。さすがに、まだ読むには至らないが、未訳のものがどのような小説なのか、簡単な紹介をしておきたい。

WHITE BARRIER
 スリルと金と女を求める元米軍兵士、白人と黒人との混血の美しいダンサー、因習を破ろうとし続ける黒人の芸術家。パリを舞台に、この三人の男女を中心に描いた物語のようだ。

LOVE AND MONEY
 金融の天才児マックス・アーマンドの野心に満ちた生涯を描く、500ページを超える大作。

UNTIL THE REAL THING COMES ALONG
 映画女優テディ・フォスターの波瀾の生涯を物語る、これも大作。ただし300ページをちょっと切るくらいなので、LOVE AND MONEY ほど長くはない。

 こう並べてみると、ミステリの範疇に入るのは、邦訳された二作だけのようだ。が、その二作からだけでも、構成の巧みさ、映画的なイメージの鮮やかさ、演出の心憎さが感じられたので、ミステリではない、とはいえ、これら三作も読む価値は充分にありそうだ。また、他にもまだ著作があるかもしれない、と思っていたい気もする。不慮の事故で40年の生涯を閉じた、非専業作家であるから、ぼくの夢で終わりそうなことではあるけれど。
 クラッドは短篇小説も多く手がけているらしく、これらの本の著者紹介にも言及がある。また、ネット古書店で、彼の作品の掲載誌が出品されているのを見ることもある。ただ、古い雑誌は古書よりも高価なので、今のところ、手を出す気になれない。きっと面白いものがある、とは思うのだが。

(感想のブログ)
『ニューヨークの野蛮人』http://d.hatena.ne.jp/uncle_mojo/20090328/p2
『ダイヤモンドの味』http://d.hatena.ne.jp/uncle_mojo/20090419/p1