2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

スティーヴンスン『ジーキル博士とハイド氏』

読んでもいないのに読んだつもりになっている本といえば、この『ジーキル博士とハイド氏』もその代表格になってしまうのだろう。こう書いているぼくも、子供の頃から題名を知ってはいながら、最初に読んだのは創元推理文庫の『ジキル博士とハイド氏』(夏来…

ドン・ウィンズロウ『犬の力』

1970年代半ばから90年代末にかけて、合衆国と中米をおもな舞台に、麻薬戦争の渦中で生きる人々を描いた群像劇。この物語が、どこまで事実にもとづいているか、ぼくは知らない。だが、ありうることであり、ここに描かれていることは、今もなお繰り返されてい…

モダン・ジャズ・カルテット『コンコルド』

ここ二か月あまり、このアルバムばかり聴いている。 聴きはじめたときは、ヴィブラフォンの音が響きすぎるように思えて、どうも肌に合わなかった。だが、繰り返しているうちに、この音がピアノを引き立てているように聴こえてきた。さらに、このヴィブラフォ…

朝松健『ぬばたま一休』

朝松健氏の百点目の著書は、代表作である〈一休シリーズ〉の短編集となった。 収録された六篇のうち、五篇までが《異形コレクション》に発表されたもの。だが、一冊にまとめられたものを続けて読むと、著者が一篇ごとに込めた気迫を、あらためて感じる。どの…

ダシール・ハメット『デイン家の呪い』

ハメットの長篇の中で唯一、古い(そして、読むのに努力を要する)翻訳で残されていた本作が、ついに小鷹信光氏の新訳で刊行された。旧訳は五十年以上前のもの、いま批判しても仕方ないだろうが、筋を追うだけでさえ頑張らなければならなかったのは確かで、…

パブロ・デ・サンティス『世界名探偵倶楽部』

「名探偵」という言葉には、敬意と称賛が含まれている、と思い続けてきた。が、それだけではないことに、あらためて気づいた。懐かしさと、もうひとつ、悪意のない「からかい」のような可笑しさがある。ことに、何人もの名探偵が一堂に会する物語、たとえば…

アガサ・クリスティー『ハロウィーン・パーティ』

日本でもハロウィーンを楽しむ人が増えてきたようだ。下町で、悪魔の三叉矛を持った女子中学生の一団とすれ違った。『スター・ウォーズ エピソード1』のダース・モールや、『スクリーム』の絶叫仮面など、思い思いに仮装した小学生たちが、その中の一人のお…