2010-02-01から1ヶ月間の記事一覧

マイケル・バー=ゾウハー『ベルリン・コンスピラシー』

《ミステリ》の範疇に入る小説の中でも、とりわけエスピオナージュ――スパイ小説は複雑にして精妙。薦めるつもりで、うっかり余計なことを言って、台無しにしかねない。 マイケル・バー=ゾウハーの十五年ぶりの新作長篇も、あまりに面白いものだから、人に薦…

ジェイン・オースティン『高慢と偏見』

急に、このイギリス文学の古典を読みたくなったのは、『高慢と偏見とゾンビ』という、なんとも奇天烈な小説が邦訳されたから。本歌取りをホラーでしてみた様子で、面白そうなのだが、原典を知らないで本歌取りを楽しむわけにもいくまい。 で、この『高慢と偏…

ジョン・ハート『川は静かに流れ』

主人公アダム・チェイスが、ノースカロライナ州ローワン郡に向かう冒頭から、もう胸に堪えてくる。殺人の冤罪ゆえに故郷を捨てた彼ほどでは、もちろんないのだが、自分の思い出の重さ暗さが浮かんで、ページをめくる手が滞りがちになる。 それでいて、なのか…