2010-07-01から1ヶ月間の記事一覧

立原透耶『夢の中の少女』

つくりごとのホラーは大好きなのだけれど、「本当にあった怖い話」の類は、本当に怖いので敬遠している。実話怪談の本が流行っているようだけれど、ほとんど手に取ったことがない。 それでも、立原透耶さんの怪談実話集だけは、楽しく読んでしまう。「怪異を…

金原瑞人編訳『八月の暑さのなかで』

ホラーが好きで年じゅう読んでいるものだから、夏といえば怪談、とはあまり思わないのだが、この猛暑の折に相応しいタイトルのアンソロジーが出ていたので、飛びついて読みはじめた。英米の怪奇小説から、金原瑞人さんが傑作を選りすぐって訳した、『八月の…

ルイス・ベイヤード『陸軍士官学校の死』

自分が読んだ本について書くことが、気づかれず見過ごされていた本に目が向くきっかけになればいいな、と思う。読もうかどうしようか迷っている人の背中を押すくらいの役に立つほどのことができれば、さらにいい。「本が売れない」と聞く一方、その声とは裏…

ジャック・カーリイ『百番目の男』

とんでもないミステリ作家がいたものだ。ジャック・カーリイ、曲者であり、巧者でもある。 この人の長篇ミステリは三作も邦訳されているのに、読み逃していたので、まずは評判の高い第二作『デス・コレクターズ』を読んでみた。で、読み終える前に第一作の『…

リチャード・コンドン『ワインは死の香り』

このブログに何か意味があるとすれば、たとえば本を取り上げたとき、「こんな本がある」もしくは「あった」と知る機会をひとつ増やした、というくらいなものだろう。とすれば、あまり語られることのない本を紹介しておくことで、少しは有用になれるかもしれ…