2008-09-01から1ヶ月間の記事一覧

【映画】落下の王国

なんとも不思議な映画だ。 舞台はロスアンゼルスのとある病院、時代は映画の草創期。 入院患者の一人、五歳の女の子が登場する。名前はアレキサンドラ。彼女はオレンジの木から落ちて、腕を骨折した。そのアレキサンドラが、風のいたずらで出会ったのが、や…

20世紀の幽霊たち

短篇小説は難しい。 めりはりがあって、きれいに決まっていると、あざとく見えてしまうし、率直だと拙く見える。めりはりがあって、きれいに決まっていて、率直で、それでいてあざとくも拙くも感じさせないのが、本当に巧い短篇小説なのだろう。 その、本当…

さむけ

「ハヤカワ文庫の100冊」フェアで、結構な点数の既刊がリニューアルされて書店に並んでいる。どれも良いデザインだが、とりわけ目を惹いたのが、ロス・マクドナルドの『さむけ』。ハードボイルド・ミステリの傑作として名高いこの作品、ぼくが前に読んだのは…

京都宵 異形コレクション

アンソロジーが好きで、こと英米のホラーのものは、原書を買いあさっていた時期があった。『幽霊世界』や『血も心も』、《妖魔の宴》シリーズなどのペーパーバックも持っているが、このように邦訳されたものはほんの一部。ジョー・R・ランズデール編のウェ…

シャドー81

名作として知られているのに、読みたくても手に入れられなかったミステリが、最近になってあらためて書店に並んでいる。前回御紹介した『エヴァ・ライカーの記憶』もそのうちだが、同じ月にこの『シャドー81』が、同様に出版社を移して発売された。 新潮文庫…

エヴァ・ライカーの記憶

1912年4月、豪華客船タイタニック号が沈没。1941年11月、ホノルルでアメリカ人夫婦が殺害され、対応の不手際から警察官ノーマン・ホールは辞職を余儀なくされる。そして1962年1月、小説家となり押しも押されもせぬ地位を手に入れたノーマンのもとに、出版…

「堕天使」がわかる/「世界の魔法使い」がわかる

畏友・森瀬繚氏の近著です。 悪魔事典といった観の『「堕天使」がわかる』は、坂東真紅郎、海法紀光の二氏、オカルティスト紳士録の趣ある「『世界の魔法使い」がわかる」は、静川龍宗氏との共著。ともにソフトバンク文庫から、7月に出たばかり。 一見、最…