2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

マイクル・コナリー『エコー・パーク』

マイクル・コナリーのミステリを読んでいて、実際のページ数以上のボリュームがあるように思えてならないときが、しばしばある。文章が簡潔で、伏線が綿密なだけに、読んでいるあいだ緊張感がとぎれないからだろう。もちろん、この緊張感は、実に心地よい。…

マックス・ブルックス『WORLD WAR Z』

そのウイルスの罹患者は高熱を発し、まもなく死亡する。だが、それで終わりではない。死後に甦り、生者を襲い喰らうようになる。中国奥地で発生するや、ウイルスは対処方法を探るいとまもなく蔓延し、世界は生ける屍であふれてゆく。生き延びるためには、人…

ジョン・ハート『ラスト・チャイルド』

前作『川は静かに流れ』の謝辞で、ジョン・ハートは自作を「家族をめぐる物語」と言っている。たしかに、同作を読んで、まさにそうだな、と思ったが、それ以上にぼくが感じたのは、とてもよくできたミステリであることだった。これは「家族」という素材から…

ジェラルディン・ブルックス『古書の来歴』

一九九六年、ボスニア・ヘルツェゴビナ。幻の書『サラエボ・ハガダー』発見の報を受け、オーストラリアの古書鑑定家ハンナ・ヒースは、サラエボの国立博物館へ急行した。五百年前スペインで制作されたといわれる、このユダヤ教の祈祷書は、百年ものあいだ所…