立原透耶『夢の中の少女』

 つくりごとのホラーは大好きなのだけれど、「本当にあった怖い話」の類は、本当に怖いので敬遠している。実話怪談の本が流行っているようだけれど、ほとんど手に取ったことがない。
 それでも、立原透耶さんの怪談実話集だけは、楽しく読んでしまう。「怪異を語る」から怪談、だから怖い話ばかりでなく、不思議な出来事や「だから何なの」というような正体不明のことも含まれる、という著者の怪談観に惹かれるからだろう。もちろん怖い話も入っているから、用心しながら読んでいると、愛猫との不思議な縁の話にあたたかい気持ちになったり、ぼく自身にも覚えのある、奇妙な既視感の話に出くわしたり。
『ひとり百物語』は著者御自身の体験談の比重が高かったけれど、今回は聞き書きが多め。演出を控えた、無駄のない語りに、前作にも感じた松谷みよ子さんの『現代民話考』との共通点を、さらに強く感じながら楽しんだ。
『ひとり百物語 怪談実話集 夢の中の少女』立原透耶 メディアファクトリー 2010
http://www.mediafactory.co.jp/c000051/archives/025/006/25693.html