映画『シャーロック・ホームズ』

 ガイ・リッチー監督の『シャーロック・ホームズ』(SHERLOCK HOLMES.2009年 アメリカ映画)は、ドイルを原作にしているのではなくて、正典から想を得たライオネル・ウィグラムのグラフィック・ノヴェルによるものだとのこと。なるほど、全体に「漫画」っぽくアレンジされた空気があったのは、そのせいか。
 黒魔術の儀式殺人を繰り返したブラックウッド卿(マーク・ストロング)が絞首刑に。だが彼は復活し、再び陰謀を巡らす。シャーロック・ホームズロバート・ダウニー・Jr.)とワトソン博士(ジュード・ロウ)は、彼を食い止めるため奔走するが、そこにアイリーン・アドラー(レイチェル・マクアダムス)も加わり、ロンドンで大活劇を繰り広げる。格闘と銃撃戦が盛りだくさんのアクション映画で、『ルパン三世』みたい、という噂にも納得。すっとぼけたホームズが、格闘するさいには細かな計算をしたり、ワトソンがやたら強かったりと逸脱しながら、要所要所で正典を踏まえていて、キャラクターをただ借りているだけでないのが楽しい。最後の謎解きは、なあんだ、というようなものだけれど、そこは御愛嬌。
 シャーロッキアンの中でも、ことに真面目な人は怒ってしまうかもしれないけれど、二時間の気楽なお楽しみなんだから、いいじゃありませんか、こういうの。