倉庫番の年末

 ブログを休んでいるあいだに、こんなことを考えていた。
「一個人が読んだ本について書いた文章を公開することに、どんな意味があるのか」と。
 趣味のうちなんだから、意味など考えることはない、とは思う。だが、少しは役に立っているだろう、と思えることが、ひとつある。
 出版科学研究所の『2009出版指標年報』によると、新刊書籍の刊行点数は、2002年以降、微増微減はあるものの、七万点台を続けているという。目下のピークは2006年の77,722点だが、単純に日割りにしても、一日に二百点以上の書籍が刊行されていることになる。参考までに、その二十五年前、1981年の新刊は29,263点。二倍を軽く超えているわけだ。
 もちろん、読者はその中から自分の興味に合うものを選ぶわけだが、たとえば対象を「海外のミステリ」に絞っても、新刊の刊行点数が多くて読み落しがちだ。さらに、人の興味は、そう簡単には絞り込めない。他のジャンルに寄り道もするし、読みたいものは新刊だけではない。おまけに、読書時間はそうそう思うようには取れないから、読める本は自然に限られてしまう。毎週せっせと二冊ずつ読んでも、一年で百冊ちょっと。ぼくはそこまでがんばってるかどうか。
 そんな現状のなか、興味を持ったのに忘れてしまった本について、誰かが書いているのをネットで見つけたら、それを記憶のすみに留めておくことはできるだろう。見落としていた本に、興味を持つきっかけにも、なるかもしれない。
 自分の記憶に留めておきたい本について語る。そうすることで、誰かがその本を思い出したり、気づいたりしてくれれば、幸いです。

 さて。ここ一か月くらいで読んだ本について、御紹介することにしましょう。