デューク・エリントン『MONEY JUNGLE』

 ジャズを聴きはじめる前から、なぜかデューク・エリントンだけはベスト盤ながらCDを持っていた。ビッグバンドのスイングが好きで、こと、かの名曲「A列車で行こう」は、繰り返し聴いたものだった。
 急に、そのエリントンが聴きたくなったのは、気が沈んで「もうジャズなんて飽き飽きだ」などと、たいして聴いてもいないくせに思ったときで、週末にたまたま新宿に行って、ふと立ち寄ったレコード店の、目立つところにこの『MONEY JUNGLE』のCD(BLUE NOTE)が置いてあったから。ビッグ・バンドのリーダーとしてしか知らなかったデューク・エリントンの、ピアノ・トリオだという。ベースはチャーリー・ミンガス、ドラムスはマックス・ローチ。ローチは、ソニー・ロリンズチャーリー・パーカーのアルバムに参加しているのを聴いているが、ミンガスは名前は知っていても、まだ聴いていない。
 試聴してみて、すぐ買うことにした。エリントンのほんの一面しか知らないでいたことに気づいたからだ。

〈収録曲〉Money Jungle / Fleurette Africaine / Very Special / Warm Valley / Wig Wise / Caravan / Solitude / Switch Blade / A Little Max (Parfait) / Rem Blues / Backward Country Boy Blues / Solitude (Alternate Take) / Switch Blade (Alternate Take) †/ A Little Max (Parfait) (Alternate Take) / Rem Blues (Alternate Take)† *1962年9月17日、ニューヨーク・シティにて録音(†はボーナス・トラック)

 骨に響くピアノ。力強く、荒々しく、それでいて心地良い。ベースも、ドラムスも(ことにハイハットが)やはり骨に響く。耳ではなく、体で聴いているような曲が続く。タイトル曲はもちろんだけれど、「ヴェリー・スペシャル」や「キャラヴァン」、「レム・ブルース」あたりの、頸椎から肩胛骨を通って背骨を下る快感ったらない。
 体感的なベースとドラムスと共に、不協和音でさえかっこよく叩き出しているエリントンは、ビッグ・バンドの彼とは違うような気もしたが、繰り返し聴くうちに、違ってはいない、と気づいた。自由奔放なようでいて、やはり端正なのだ。
 偶然とはいえ、名盤に出会えてうれしくてたまらない。ぼくはもう「ジャズなんて飽き飽き」だなんて、思わないだろう。ローチやミンガスのアルバムも探したいことだし、ね。

(余談)
 先月末、リー・モーガンのことを書いたときに、ふと思いたってページビューを設定してみました。20日ほどたった今日、アクセスが1000を超えているのに気づきました。個人的な楽しみでしかないこのブログですが、御覧いただきまして、ありがとうございます。