『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』

 ここ何日か、『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション[+1]』(ユニバーサル、2007)ばかり、繰り返し聴いている。

〈収録曲〉ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ/レッド・ペッパー・ブルース/イマジネーション/ワルツ・ミー・ブルース/ストレート・ライフ/ジャズ・ミー・ブルース/ティン・ティン・デオ/スター・アイズ/バークス・ワークス/ザ・マン・アイ・ラヴ(ボーナス・トラック)
〈パーソネル〉アート・ペッパー(as) レッド・ガーランド(p) ポール・チェンバース(b) フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)*1957.1.19 ロサンジェルスにて録音

 聴きはじめてすぐ、このタイトルを「アート・ペッパーと愉快な仲間たち」なんて、翻訳したくなった。コミカルな演奏をしている、というのでは、もちろんない。ガーランド−チェンバース−ジョーンズのトリオが、新しい友達を歓迎しているかのような印象があるから。コンガのレイ・バレットを迎えた「マンテカ」も楽しげだったけれど(こちらのドラムスはアート・テイラー)、なんだかそれ以上に、親しみのようなものが聞こえる。
 さらに、曲名からも茶目っ気を感じる。“レッド”ガーランドとアート“ペッパー”をつなげて「赤ピーマン」みたいなタイトルにした「レッド・ペッパー・ブルース」とか、「ジャズ・ミー・ブルース」があるならワルツも、といいたげな「ワルツ・ミー・ブルース」とか。
 ライナーノートによると、このセッションは、麻薬に溺れるペッパーに、ドッキリ企画よろしく録音当日の朝に伝えられた、彼にとってはぶっつけ本番だった、とのこと。いくらプロのサックス・プレイヤーだって、こんなことをされたら吹きづらかろうに、そんな様子はみじんもない。なんとも楽しそう。最初の「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」は言うまでもない名曲だから、掴みがいいのは当然にしても、四人が演奏を楽しんでいるのが伝わってきて、楽器で会話しているように聞こえるところもあちこちにある。気の置けない友達が集まった心地よさなんだろうか。どの曲がどういい、なんて書けない。どれも心地よくて、楽しくて、親しげだ。
 ジャズで肝心なのは「楽しいこと」なんだろうな、きっと。