ケニー・バレル『MIDNIGHT BLUE』

 ポール・チェンバースの『BASS ON TOP』で、ケニー・バレルのギターを聴いて以来、彼のリーダー・アルバムを聴いてみたかった。「You Should be So Nice to Come Home」や「Dear Old Stockholm」でのギターが印象深かったから、というだけなのだが。
 バレルのアルバムから、この『MIDNIGHT BLUE』(BLUE NOTE) を選んだのは、ジャケットやタイトルに惹かれたからだが、レッド・ガーランドの『MANTECA』でコンガを叩いていたレイ・バレットが参加しているから、というのもある。もうひとつ。テナーサックス奏者の「スタンリー・タレンタイン」という名前が気になったから。タレンタインなんて、なんとも響きがいいじゃないか。

〈収録曲〉Chittlins Con Carne / Mule / Soul Lament / Midnight Blue / Wavy Gravy / Gee Baby Ain't I Good To You / Saturday Night Blues / Kenny's Sound (bonus track) / K Twist (bonus track)
〈パーソネル〉ケニー・バレル(g) スタンリー・タレンタイン(ts) メジャー・ホリー・ジュニア(b) ビル・イングリッシュ(dms) レイ・バレット(conga) *1967年4月21日、ニュージャージーにて録音

 二曲目のタイトルはなぜ「騾馬(ミュール)」なのかな、と思ったら、戯れにミュージシャンたちを動物にたとえたとき、この曲をバレルと合作したホリー・ジュニアが驢馬と言われたことからきているのだとか。これと、ブルースの古典らしい五曲目のほかは、バレルのオリジナル曲で固めてある。彼のギターも、タレンタインのサックスも、どこか歌っぽくてほどよく甘いのがいいが、そこはブルースの味わいなのだろう。タイトル曲以降、四曲続けてブルースナンバーの夜っぽさが味わえるが、甘ったるくなっていないのは、イングリッシュのドラムとホリー・ジュニアのベースが、シャープだからなのだろう。
 が、そこにコンガの音が加わると、なんとも体感的で、どこかしらエロティックにさえなってくるのには驚いた。ピアノ・トリオが相手のときはなんとも楽しげで、どこかのんびりしていたバレットのコンガなのに、ギターやサックスと出会うと、このように変わるものか。
 はまりました。名盤です。加えて、タレンタインのリーダー・アルバムを聴きたくなった。聴きはじめてまだ半年足らず、ジャズってこういうふうにはまっていくものか。