エリック・ドルフィー『OUT TO LUNCH』

《収録曲》Hat and Beard / Something Sweet, Something Tender / Gazzelloni / Out to Lunch / Straight Up and Down
《パーソネル》エリック・ドルフィー(as、fl、bcl) フレディ・ハバード(tp) ボビー・ハッチャーソン(vib) リチャード・デイヴィス(b) アンソニー・ウィリアムス(dms) *1964年2月25日、ニュージャージーにて録音

 タイトルとジャケットデザインに惹かれた。「エリック・ドルフィー」という名の響きにも惹かれた。でも、一度聴いてみて、わからなかった。なんだろう、これは。聴くことに集中していても、音のほうが逃げていくような、つかみどころのなさ。それでいて、迫力はある。奇妙な力強さを感じた。
 そんな印象を持ったまま、しばらく聴かずにいたのだが、一か月ほどたってから、無性に聴きたくなった。今度は、自然に曲が耳から入ってきた。いや、それどころではない。ヴィブラホンの響く一曲めから、ぐいと引き込まれてしまったのだ。そのまま何度も繰り返し、聴くたびに楽しくなってきた。二曲めはタイトルどおり、甘く優しく聴こえるし、三曲めはただただ恰好よく、体がビリビリするようだ。
 それでも、なぜまた突然、このアルバムにはまってしまったのか。わからない。どう語ればいいか。まだ言葉が見つからない。繰り返し聴くばかり。
 ぼく一人しかいない、しんと静まり返った美術館。目の前には、抽象画の巨大なカンバス。何が描かれているのかわからないが、前に立ってじっと見ていると、いろいろな思いが浮かんでくる。さまざまなものが見えてくるような気がする……いま言えるのは、こんなイメージだけ。

http://www.emimusic.jp/jazz/release/200709/tocj7040.htm