劇団フーダニット『ナイル殺人事件』
劇団フーダニットの第八回公演『ナイル殺人事件』を見てきました。
アガサ・クリスティの作品には、自作小説の戯曲化も多くありますが、ポアロものの長篇『ナイルに死す』もその中に数えられるとは、知りませんでした。
もっとも、戯曲のほうには、ポアロは登場しません。だから登場人物の中の、誰が犯人かはもちろん、誰が謎を解くかも、わからない。皆が皆、怪しく見えてくる。トリックや犯人などは、小説と変わりませんが、小説の枝葉をそぎ落とし、戯曲らしくすっきりさせていることも相俟って、サスペンスフルでした。
本格ミステリを視覚化するのは、推理の過程も見せなければならないぶん、小説よりはずっと難しいでしょう。この『ナイル殺人事件』は、そこのところも巧くできていたし、謎解きの場面では演者たちの台詞のやりとりにめりはりが利いていて、見事でした。
上演時間2時間30分という長いお芝居でしたが、最後まで楽しく見ることができました。なお、本編開始前に舞台ではベリーダンス、幕間にはロビーでハイビスカスティーとデーツのサービスがあるというのも、また心にくい「遊び」でした。