ジョン・コルトレーン DEAR OLD STOCKHOLM

《収録曲》Dear Old Stockholm / After the Rain(1963年4月29日録音)One down, One up / After the Crescent / Dear Lord(1965年5月26日録音)
《パーソネル》ジョン・コルトレーン(tenor saxophone) マッコイ・タイナー(piano) ジミー・ギャリスン(bass) ロイ・ヘインズ(drums)
http://www.vervemusicgroup.com/artist/releases/default.aspx?pid=9451&aid=2660

 タイトル曲をはじめて聴いたのは、ポール・チェンバースの『ベース・オン・トップ』で。ケニー・バレルのギターが奏でるメロディが胸に沁みた。スタン・ゲッツの演奏で有名だというので、この曲を収録した彼のアルバムを探したが見つけられず、そんなときにふと目にとまったのが、ジョン・コルトレーンのこの『DEAR OLD STOCKHOLM』(inpulse! 1993)。
 ジャズに関してはどうも、本を読んだり調べたりするのが苦手で、それは自分の知識のなさを痛感するからなのだけれど、これを聴きながら、英語の解説をなんとか拾い読みしてみた。これはコルトレーンのカルテットのドラマーがエルヴィン・ジョーンズという人だったころ、彼が録音に参加できないときに、代役にロイ・ヘインズを呼んだときの曲を、集めたものらしい。そうか、それで、前半二曲と後半三曲の録音のあいだが、二年余りあいているのか。
 聴きはじめて、まずはタイトル曲にそっくり心を奪われた。奔放なサックスとピアノ。好対照と言えそうに、クールにリズムを刻むドラムスとベース。
 二曲目のやさしさにも浸ったが、圧倒されたのはそれに続く、「One down, One up」「After the Crescent」。それぞれ15分ほどある曲なのだが、サックスはもちろん、ピアノの暴れようがすばらしく、もっと長く聴きたくなる。こと前者の、コルトレーンが10分ほど吼えたけったあとを受けて、鍵盤をガシガシ叩き込んでくるあたりは、演奏というよりも戦闘のようだ。それでいて、ドラムスとベースは、やはりクールなのが、なんとも恰好良い。
 そんな演奏のあとで、やわらかく締めくくる「Dear Lord」の心地よさ。
 膨大な数のアルバムから、1958年の『ソウルトレーン』のあと、これを聴いたというのは、真面目なファンの人たちにはおかしく思えるかもしれない。でも、ぼくはいい曲を聴いて満足しているし、コルトレーンの演奏を、さらに聴きたくなってきた。
 初心者のすることです。まずは飛び込んでみる、というのも、悪くはないでしょう。