【映画】K-20 怪人二十面相・伝

『K-20 怪人二十面相・伝』(佐藤嗣麻子監督・脚本 東宝2008)を見てきた。
 原作が北村想の小説『怪人二十面相・伝』と聞いてはいたが、この映画を紹介するTV番組を見たら、あまりに違うので驚いた。北村作品が、江戸川乱歩の《少年探偵団》シリーズの世界にリアリティを持たせるものだとしたら、映画のほうは、乱歩世界をさらにファンタスティックにしようという意図があるようだったので、たぶん見にはいかないだろうな、と思っていた。
 が、「面白い」という噂を聞くと、どうにも気になってくる。思い切って映画館に行ってみたのだが、嬉しいことに帰り道は上機嫌になっていた。そんな気分にさせてくれる映画だった。
 太平洋戦争の起きなかった世界での、1954年の日本は「帝都」が舞台で、開幕してすぐニコラ・テスラの発明の話になる。SF風だな、と思ったが、どちらかといえば、『リーグ・オブ・レジェンド』などのような、アメリカン・コミックの映画版に近い雰囲気かもしれない。タイトルバックのアメコミみたいなアニメーションや、飛行船の船腹から飛び立つ小型ヘリコプターの群れ、それらが見下ろす「帝都」のレトロ・フューチャーな景観など、かなりこの類の洋画を意識しているようにも思える。
 そんな世界のお話なのだから、細かいことは気にせず、気楽に見るのがいいのだろう。そう思うと、のんびりした演出も、どこかしら甘い脚本も、なんだか楽しげな俳優たちも、乱歩風ファンタジイの世界には似つかわしく見えてくる。
 名探偵・明智小五郎仲村トオル)と、怪人二十面相(?)と、彼に間違えられた不運なサーカス芸人・遠藤平吉(金城武)が、松たか子演ずる華族のお姫様を間に置いての大活劇。原作(いや、原案と言うほうがよさそうだ)は小説ながら、この映画、やはりコミックの実写版よろしき味がある。浮かれた話になりそうなところを、國村隼ら存在感の強い脇役がおさえているからか、見ている最中よりも、見終えてしばらくしてから、「あ、あそこは楽しかったな」と思い出す場面が多かった。
 厳しいことを言いたい人も、この映画には多いような気もする。が、ぼくには充分に楽しかった。