『クリフォード・ブラウン&マックス・ローチ』

 つきあいがなまじ長いせいか、ミステリについて書こうとすると、あれこれ考えてしまうのですが、ジャズは聴きはじめてようやく一年、初心者なだけに「聴いて感じたことを書いてみよう」というだけの、文字どおりの感想を書いています。ジャズ通の人たちには「こいつ、何も知らないんだな」と思われそうなことを書いているのでしょう。実際、本当に何も知りません。
 もしかしたら、少しはジャズの勉強をしたほうが、いいのかもしれません。が、ジャズに限らず音楽の評論書というものとは、なぜか相性が悪い。入門書や名盤ガイドでさえ、書いた人と反りが合わないと、すぐに閉じてしまいます。
 ジャズを聴きはじめたばかりの一年前は、それでも本を参考にしてみようとしましたが、そのとき気になったのが、著者の趣味や考え方を押しつけるような書きぶりのものが多いこと。不運にも、ぼくがそういうものに出会ってしまったのかもしれませんが、「ジャズ」という広大な音楽の世界に対し、「ジャズの真髄とはいかなるものか」というような自論を振り向けたり、他のジャンルの音楽を軽蔑したりする人たちが、矮小に見えてならなかったのです(そういえば、こんな人たち、ジャズに限らずいますよね。たとえばミステリやSFにも)。
 だから、今も手探り。名盤と呼ばれるものを、演奏者のつながりを追いながら聴いています。

クリフォード・ブラウンマックス・ローチ
〈収録曲〉デライラ / ザ・ブルース・ウォーク / ダフード / ジョイ・スプリング / ジョードゥ / ホワット・アム・アイ・ヒア・フォー / ジョイ・スプリング(別テイク) / ダフード(別テイク)
〈パーソネル〉クリフォード・ブラウン(tp) ハロルド・ランド(ts) リッチー・パウエル(p) ジョージ・モロウ(b) マックス・ローチ(ds) 1954年8月ロスアンジェルス、1955年2月ニューヨーク・シティにて録音

 このアルバムは、リーダーの二人に惹かれて買いました。が、彼らだけでなく、クインテットそれぞれの音が、なんとも心地よい。サックスが耳に届けばその音を追って聴き、ピアノが気になったら、今度はそっちを追いかける。力強く熱い演奏なのに、そんなふうに音に身をまかせているうちに、くつろいでくる。
 ここ二週間ほど、毎日のように聴いていますが、飽きることがありません。

http://www.universal-music.co.jp/jazz/best200/UCCU-5031.html