『ポール・チェンバース・クインテット』

〈収録曲〉 Minor Run-Down / The Hand Of Love / Softly As In A Morning Sunrise / Four Strings / What's New / Beauteous / Four Strings(別テイク)
〈パーソネル〉ポール・チェンバース(ベース)、ドナルド・バード(トランペット)、クリフ・ジョーダン(テナーサックス)、トミー・フラナガン(ピアノ)、エルヴィン・ジョーンズ(ドラムス)1957年5月19日録音

 ブルーノートで三枚出しているポール・チェンバースのリーダー・アルバムのうち二枚目で、『ウィムス・オヴ・チェンバース』の翌年、『ベース・オン・トップ』の二ヶ月前に録音したもの。そう思って聴くと、セクステットのまとめ役としてのベースだった『ウィムス・オヴ・チェンバース』よりも遊んでいるようで、でも、『ベース・オン・トップ』ほど派手ではない、といったふうにも聴こえてくる。
 うーん、なんだか、ジャズを勉強しているみたいな書き方だな。でも、チェンバースがやりたかったことも、組んでいるプレイヤーも、アルバムごとに異なるのだろうから、聴き比べてみると面白い。
 ライナーノートでは、チェンバースのことが「ハード・バップの時代にもっとも忙しかったプレイヤーのひとり」(岡崎正道)と紹介されている。一年ほど前に『ベース・オン・トップ』を聴いて、彼のベースが好きになったぼくは、彼の名前がパーソネルに挙がっているアルバムにあれこれ手を出してみたけれど、おかげでマイルス・デイヴィスアート・ペッパーをはじめ、いろいろな人の演奏を聴くことができた。入門者としては良い出会いをしたのだろう。それでも、今もまだ「あ、ここでも弾いてる」なんて調子で、CDを選ぶときのちょっとした目印にできるほどだから、文字どおり忙しいべーシストだったに違いない。
 これは印象というよりは勝手な思い込みなのだろうけれど、チェンバースと組んでいるプレイヤーたちは、なんだかリラックスして演奏しているような気がすることが、聴いていてしばしばある。
 このアルバム、最初の Minor Run-Down がまずカッコよくて、とりわけトランペットとサックスがいいんだけれど、 What's New のイントロのピアノもいいなあ。
 これだけピアノトリオの三曲目は、ソニー・クラークのピアノで有名な「朝日のようにさわやかに」でしょう。これもいいな、と思ったが、そういえばクラークのほうは持っていない。早速『ソニー・クラーク・トリオ』のCDを買ってみたら、録音は同じ年の10月で、ドラムスはフィリー・ジョー・ジョーンズ、ベースはこっちもチェンバースだ。やっぱり、忙しいべーシストだったんだなあ。