レッド・ガーランド『CAN'T SEE FOR LOOKIN'』

 ユニヴァーサルの廉価版で出たレッド・ガーランドの『CAN'T SEE FOR LOOKIN'』(Prestige)を聴きながら、英文のライナーノートを眺めていたら、welterweights という言葉が目に入ってきた。ガーランドがボクサーでもあったことは知っていたが、ウェルター級だったか。
 もちろん、ジャズのライナーノートだから、彼が選手だった期間とか、戦績とかは書かれてはいない。だが、ウィリアム・ガーランドというボクサーがどんなふうに闘ったか、興味が湧いてきた。もちろん、インターネットで検索すれば、わかることなのだろう。でも、このことを調べる楽しみは、しばらく取っておきたい。
 さっきまで拳で闘っていた男が、グローブを外した手でピアノを弾くと、こんな曲が流れてくる。明快で、優しく、どこかしら感傷と飄逸さが交じっていて、軽やか。緊張も激情も、リングに置いてきたかのようだ。そこに、親しい友達が、ドラムスとベースで加わる。
 ボクサーは、すっかりピアニストになっている。
 そんなふうに思ったら、心地よく聴き流していた曲が、急に胸にしみてきた。

Red Garland CAN'T SEE FOR LOOKIN'
〈収録曲〉1 Can't See for Lookin' / 2 Soon / 3 Blackout / 4 Castle Rock
〈パーソネル〉レッド・ガーランド(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、アート・テイラー(ドラムス) 1958年6月27日、ニュージャージーにて録音