ユタ・ヒップ『ヒッコリー・ハウスのユタ・ヒップ』Vol.1 & 2

JUTTA HIPP AT THE HICKORY HOUSE Volume 1《収録曲》Introduction (Leonard Feather) / 1.Take Me In Your Arms / 2.Dear Old Stockholm / 3.Billie's Bounce / 4.I'll Remember April / 5.Lady Bird / 6.Mad About The Boy / 7.Ain't Misbehavin' / 8.These Foolish Things / 9.Jeepers Creepers / 10.The Moon Was Yellow

JUTTA HIPP AT THE HICKORY HOUSE Volume 2《収録曲》1.Gone With The Wind / 2.After Hours / 3.The Squirrel / 4.We'll be Together Again / 5.Horacio / 6.I Married an Angel / 7.Moonlight in Vermont / 8.Star Eyes / 9.If I Had You / 10.My Heart Stood Still

《パーソネル》ユタ・ヒップ(ピアノ)、ピーター・インド(ベース)、エド・シグペン(ドラムス)1956年4月5日、ニューヨーク「ヒッコリー・ハウス」にて録音

 ジャズを聴くようになって三年くらいになるのだけれど、そのわりにはCDは増えていない。好きなアルバムは一か月でも二か月でも繰り返し聴いて、そのあいだ新しいものは買わないからだろう。ただ、好きな曲を見つけると、演奏者の違うのを聴き比べてみたくなって、買い集めることがある。
 EMIのブルーノート廉価盤がそろそろ販売終了だというので、久しぶりに買ってみたのが、この『ヒッコリー・ハウスのユタ・ヒップ Vol.1』。聴いてみようと思ったのは、彼女もまた「Dear Old Stockholm」を弾いているからなのだが、このアルバムには一曲目からすぐに惹きこまれた。そればかりか、二枚目をすぐに買って、通しで繰り返し聴いたほどだ。もちろん、今も聴いている。
 ユタのピアノには清冽という言葉がふさわしい。アクが強くはないが、さまざまな色を映し光を躍らせて流れる水のように、透明でいて色鮮やかな音だ。その清冽なピアノが、ベースやドラムスから色彩を引き出している。ベースやドラムスの音も、そんなピアノを楽しんでいるように聴こえてくる。デューク・エリントンも常連だったという、クラブの雰囲気も伝わってくるようだ。
 ユタ・ヒップがジャズ・ピアニストとして活動したのは、ほんの二年ほどらしい。その間、ブルーノートでリリースしたアルバムは、この二枚を含めて四枚しかない。その後は美術のほうに活動の場を移したという彼女のピアノを、しばらくは繰り返し楽しみたいと思っている。