和田誠の仕事(たばこと塩の博物館)


(展示作品の一点。たばこと塩の博物館HPより)

 先月の11日から、たばこと塩の博物館で開催されている「特別展 和田誠の仕事」を、ようやく見にいくことができた。
 和田さんの、デザイナーとしての仕事のはじまりに、煙草「ハイライト」のデザインがあった。そのことは回想記ふうのエッセイ『銀座界隈ドキドキの日々』で読んで知ってはいたが、その後も煙草と縁の深い仕事が続いていた、とは知らなかった。
 煙草の雑誌広告や、煙草や喫煙具などをモチーフにした作品をまとめて見られるのも楽しいが、煙草テーマの一コマ漫画「地にはピース」と、俳優のポートレイト「映画の中のたばこ」の、描きおろし連作が見られるのには感激した。なお、その描きおろしの制作風景の録画が、館内で見られるのだが、小さなキャンバスにアクリル絵具をパレットナイフで塗っていく和田さんの手さばきには見とれるほかない。
 ほかにも、映画や演劇のポスター、本の装丁、カレンダーの原画など、おなじみの(ということは、本領発揮の)作品が、小ぢんまりした会場にほどよく展示されて、一点一点をじっくり楽しめる。絵本の原画で驚いたのは、印刷の製版の色ごとに、一枚の絵を分けて描いたという『かいぞくのうた』。あえてこんなことをするなんて、和田さんらしいな。そういえば、『グレート・ギャツビー』の装丁について直接お話をうかがったとき、和田さんは「手間のかかる装丁だけれど、能率のよさが歓迎される世の中、ひとりくらい手間をかけるデザイナーがいたって、いいでしょう」と笑っていたっけ。
 なお、会場で販売されている図録は、和田さん御自身がレイアウトしたものだとか。さらに、巻末の資料に和田さんの著作リストが収録されているのは、嬉しい驚きだ。
開催は11月7日まで。もう一、二度は見にいきたい。
http://www.jti.co.jp/Culture/museum/tokubetu/1009_event/index.html