片倉出雲『鬼かげろう 孤剣街道』


 すべての記憶を失った男。持ち物は、四と二の目しか出ないイカサマ賽と、体が覚えた手裏剣術だけ。国定忠治から「四二目の蜉蝣」の名を受け渡世人となった彼は、群がる刺客たちを倒しながら、なくした記憶を取り戻し、四二目の賽の謎を解く旅に出る。
 謎の作家の第三作。『勝負鷹 強奪二千両』(光文社文庫)はケイパー+謎解き、続く『勝負鷹 金座破り』(同)はケイパーに絞り、引き締まった文体と曲者ぞろいの登場人物に、「江戸の〈悪党パーカー〉」のイメージをさらに強くした。本作は新シリーズの開幕編。ロバート・ラドラム『暗殺者』を連想させる設定だが、硬質な語り口とスピーディかつ油断のできない展開は、むしろアクション・ハードボイルドか。大きな謎を解くための、蜉蝣の危険な旅はここに始まる。続きが一日も早く読めるよう、願うばかりだ。
朝日文庫2010)
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