2009-01-01から1年間の記事一覧

リンカーン弁護士

愛車リンカーンを「動く事務所」に、ロスアンジェルスじゅうの裁判所から裁判所へと駆けまわる弁護士、ミッキー・ハラー。一見簡単な訴訟を引き受けたばかりに、彼は自分ばかりか、仕事仲間や別れた妻子の命まで危険にさらす窮地に追い込まれる。 マイクル・…

宇宙戦争

ぼくが初めて読んだSFは、H・G・ウェルズの『宇宙戦争』だった。小学生の頃、シャーロック・ホームズの短篇が読みたくて、従兄から貰った児童文学全集の端本に、一緒に入っていた。そのころは、本を読むことの面白さを知りはじめて、なんでも手当たり次…

荒野のホームズ、西へ行く

本格ミステリにしてホームズもののパロディ、そしてウェスタンの『荒野のホームズ』は、実に痛快な一冊で、シリーズが続けて邦訳されることを心待ちにしていました。早川書房さんありがとう、念願叶った第二作、発売されるや買って、すぐに読み始めました。 …

ひとり百物語 怪談実話集

小説でも映画でも、ホラーは好きだけれど、「実話」となると実は苦手です。映画や小説だと、作り事だと決めてかかるから安心なのですが、本当にあったこと、となると、自分の身辺でも同じようなことが起きそうで、もう怖くて。 この本は、著者、立原透耶さん…

かしこまらずに御紹介を

誰もがしているブログとはいえ、文章を公開するとなると、やはりかしこまってしまう。 これまでの感想も、まず手帳に下書きしたのを、あれこれ書き直して、短めにまとめなおしてから載せている。キーボードでは文章が思うように書けない我が身の不器用で、更…

明治・大正 スクラッチノイズ

書店で見かけて、題材の好みや守備範囲とは関係なく、いきなり心惹かれてしまう本というのが、たまにある。ここしばらく、そのような出会いはなかったのだが、久しぶりに出会ったのが、こんな本。 ジャケットが和田誠だから手にとってみたのだが、永六輔の序…

八十日間世界一周

小説を読むのは長らくの趣味だし、感想を書くのも楽しみのうちだけれど、それを「ブログ」という形で公開することは、自分にとって何の意味があるのだろう。この『暢気倉庫通信』をはじめてからというもの、ずっと考えてきた。 それが、このたび光文社古典新…

吸血鬼ドラキュラ

『吸血鬼ドラキュラ』平井呈一訳、創元推理文庫。長い付き合いの本だ。 十代の頃、初めて読んだ。古本屋で二十円で買った、ジャケットのない本。「やたらに長くて古めかしい話だな」と思った。 二十代の頃、コッポラの『ドラキュラ』を見た帰りに、綺麗なジ…

キャンバスの匂い ボクシング・コラム集

《ワールド・ボクシング》誌(現《ボクシング・ワールド》)に、十年以上にわたり連載されたコラムをまとめ、他誌掲載の試合観戦記などを加えた本で、400ページを超える厚みに、ボクシングをめぐる短文がびっしり収められている。 三分一ラウンドの試合のよ…

20,000アクセス御礼

ふと気づくと、アクセス数が20,000を超えていました。ごく個人的な、偏った好みのものばかり取り上げていますが、お付き合いくださっている皆様に、感謝申し上げます。 ありがとうございます。願わくは、引き続き、良きお付き合いをしていただけますよう。

ノエル・クラッドの未訳長篇

以前に感想を書いた『ニューヨークの野蛮人』と『ダイヤモンドの味』の著者、ノエル・クラッドに興味を持ち、他にどのようなものを書いているのか、探してみた。 『ニューヨークの野蛮人』の解説には、同書を含め、四作が紹介されている。 THE SAVAGE ハード…

美少女

吉行淳之介のエッセイが面白いので、続けて小説を読んでみたら、こんなものに出会った。 もし、これがアメリカの小説家が書いたもので、舞台はロスアンジェルスかどこか、主人公が映画の脚本家かなにかだったら、おそらくはハヤカワ・ノヴェルズで出るのがふ…

吉行淳之介自身による吉行淳之介

連休のあいだに、東北にある妻の実家を訪れた。 この前、正月に訪れたとき、ぼくが席をはずしているあいだに、義母は「好き嫌いなくよく食べる婿だ」というようなことを、妻に言ったらしい。東海の生まれのぼくが、地元のものをうまそうに食べるのに、義母は…

D・アリグザンダーの《新聞記者ハーディン》シリーズ

何年か前に、デイヴィッド・アリグザンダーの『恐怖のブロードウェイ』を読んで、とても面白かったのを憶えている。《ブロードウェイ・タイムズ》の記者バート・ハーディンが、〈ウォルドウ〉と名乗る連続殺人鬼に恋人を殺され、その正体を追うという、一見…

『ポール・チェンバース・クインテット』

〈収録曲〉 Minor Run-Down / The Hand Of Love / Softly As In A Morning Sunrise / Four Strings / What's New / Beauteous / Four Strings(別テイク) 〈パーソネル〉ポール・チェンバース(ベース)、ドナルド・バード(トランペット)、クリフ・ジョー…

ダイヤモンドの味

『ニューヨークの野蛮人』(ハヤカワ・ミステリ)の解説「夭折の作家」によると、ノエル・クラッドは1958年に同作で脚光を浴び、続いて1960年に LOVE AND MONEY、1962年に UNTIL THE REAL THING COME ALONG の二作を発表したが、後者が出た年に事故死したと…

本漫画

和田誠さんが、毎日新聞の書評欄に描き続けた、本をテーマにしたひとコマ漫画をまとめた本。 ひとコマ漫画だから、ぼくに何が語れるというものでもなく、書店で見かけたらまずは手にとって、何ページかながめてみてください、とお願いするくらい。楽しくなれ…

ニューヨークの野蛮人

『都筑道夫ポケミス全解説』(フリースタイル)からは、編集者時代の都筑さんの、海外の新しいミステリを紹介する気迫のようなものが感じられて、まず本そのものが面白いのですが、その頃のものをはじめポケミス全般を、あらためて読んでみたくなる一冊でも…

ブログ一周年

ふと気づいたのですが、『東京大学のアルバート・アイラー』の感想を書いたとき、このブログをはじめて一年になっていました。よく続いたというべきか、一年なんて短いものだというべきか。 振り向くと、やはり自分の好みだけで書いているので、話題はもっぱ…

濃紺のさよなら

大きな書店で「ポケミス」、つまりハヤカワ・ミステリの棚を見ると、安心する。文庫だと、今ではもう二、三年しないうちになくなってしまうミステリはざらにあるのだが、ポケミスで出たものは、十何年か前に出た本でも棚におさまっていることが多いからだ。…

東京大学のアルバート・アイラー

ジャズを聴きはじめて、だいたい一年。ジャズに強い友人たちが薦めてくれたアルバムや、自分で興味を持ったものを、引き続き聴いている。名盤ガイドブックや評論書は相変わらず手に取る気になれない。本は読むが、ジャズに関しては本イコール勉強、という印…

ジャニータ・シェリダン

ジャニータ・シェリダンのミステリを読むと(とはいっても、この人は寡作なうえ、邦訳もまだ長篇二篇と、昔に雑誌掲載された中篇一篇を数えるのみだが)あたたかい気持ちになる。そして、ミステリの楽しみというのは、本筋のほかにもあるのだな、と、あらた…

殺人をしてみますか?

さて、1950年代の名盤を聴いていたら、同じ時代のミステリが読みたくなってきました。 そこで手に取ってみたのが、ハリー・オルズカーの『殺人をしてみますか?』。1958年の作品で、翌年にはもうハヤカワ・ミステリの500番として邦訳されました。早い! 『都…

ポール・チェンバース・セクステット『WHIMS OF CHAMBERS』

先日、仕事帰りにCDショップに寄ってみました。とはいえ、JRの駅構内にある、いわゆる「エキナカ」のお店ですが。でも、広さもほどほどで品揃えもそれなりに良く、ジャズの棚もけっこう取ってある。EMIのブルーノート名盤シリーズも並んでいたので、…

法人類学者デイヴィッド・ハンター

最近「翻訳ミステリが売れていない」と耳にすることが多い。海外の小説が売れないという本屋さんのぼやきは、昔から聞いてきたものだけれど、あの頃はミステリはロマンス同様、まあ別枠かな、という扱いだったような気がする。 最近、書店を見て回ると、なる…

都筑道夫ポケミス全解説

長らく予告されていたフリースタイルの『都筑道夫ポケミス全解説』が、とうとう刊行された。快挙である。 ポケミス(ハヤカワ・ミステリ・シリーズ)のフォーマットを踏襲した平野甲賀さんの装丁で、572ページという分厚さ。111本の解説と、「ぺいぱあ・ない…

心霊博士ジョン・サイレンスの事件簿

1908年に刊行された、アルジャナン・ブラックウッドによるオカルト探偵ものの古典。コナン・ドイルの『シャーロック・ホームズの生還』が1905年の刊行であり、やはりジョン・サイレンスにも、どこかしらホームズの影が見えるような印象を受けた。ホームズも…

『クリフォード・ブラウン&マックス・ローチ』

つきあいがなまじ長いせいか、ミステリについて書こうとすると、あれこれ考えてしまうのですが、ジャズは聴きはじめてようやく一年、初心者なだけに「聴いて感じたことを書いてみよう」というだけの、文字どおりの感想を書いています。ジャズ通の人たちには…

幻想探偵 異形コレクション

『幻想探偵 異形コレクション』井上雅彦監修 光文社文庫 2009 ぼくがホラーにはまったのは、アメリカでホラーがブームになった1990年代によく出版されていた、ペーパーバックの書き下ろしホラー・アンソロジーでした。追ってこの《異形コレクション》が始ま…

猫の匂いのする侍

『猫の匂いのする侍』芦川淳一 双葉文庫 2009 『若竹ざむらい』に続く《おいらか俊作江戸綴り》の第二巻。主人公も作品の色調も陽気で、爽快なシリーズなので、続きを楽しみにしていました。 五章立ての連作長篇で、あちこちにミステリ味が利かせてあり、滝…